あそけし

メイドブログ

壊れた

精神は混迷の極にあった。かねてより私が密かにその内に神秘なるものの働きを認めていた、汚濁とか墜落とかいった事柄からは永遠に隔絶されていなければならないのであり、私が今までの試みの中でもただ二つだけ、深夜の異常な神経興奮によって神経の根を意のままに操ることができる状態にあって、血の滴る反道徳的な魔手でそれらを鬼畜の領域に引きずり込み、包み隠された秘密を暴き出し、欲得尽で慰みものにするどころか、いざ実行の段にあってはそれに手を触れることさえ躊躇われた二つのもの、これらは共通の源泉を見出すことができるのだが、とにかく私がその聖性の光輝によって言及することを、嘲弄することを躊躇い続けてきた、二つの神聖な領域とそれらに対する観念的願望があったと言っておこう。そして先ほどそれらが未曾有の侵犯を受けたということも。私はこの種の願望を今まで、たとえ錯覚的であるにせよ適切に満たす術を知らなかった。それはそこにおいて軽佻浮薄に−余りにも軽薄に消費されていた。私の知らない声で喘ぎ、私の知らない体勢で転げ回り、私の知らないやり方で花を愛しており、純血を失い墜落したすがたを神経の視界で捉えた途端に理性がそれを拒否し、脳髄が無秩序にかき回されるような感覚があった。それに感応して並々ならぬ憎悪がもちあがったが、続けて膨大な無気力と意気阻喪に見舞われ、客観的に見れば脈絡の全く不明瞭な、理不尽な癇癪に身体の支配権を委ねることだけは回避することが出来た。畏怖と憧憬の両極反応によって不安定ながらもある程度均衡が維持されていたといえる精神はなだらかな球形を描いていたが、既に引き裂かれ、蹂躙され、嫐られ、皮を剥がれ、去勢され、裏返しにされ、毒液が塗布され、引き延ばされ、磔にされ、殺害され、凌辱されてしまってはキィーーーーーーーーーーーーーーーーーーアとならざるをえない。かくして精神は大星型十二面体となった。きっと分からないだろうが、終わりなのである