あそけし

メイドブログ

眠れぬ夜に

なかなか眠りにつくことが出来なかったので、焼き眠剤を服用することにした。眠剤といっても今手元にあるのは医師から直接処方されるような、脳髄にキッチキチに作用して服用後の精神に異様な活力、もしくは安らぎを与え、普段私たちを人間たらしめているような何らかの枠組みに対して普段私たちが与えているある一定の価値を忘却の彼方へと葬り去り、その外側にある何か深淵な領域に導いてしまうことで外面的には完全な無を迎えてしまうようなアレではなく、漢方をいい感じにごちゃ混ぜして作られたマイルドめなやつです。淡い黄色の見た目にところどころ焦げ目がついて黒ずんでいる箇所があり、たまごボーロを彷彿とさせる。口元へ持っていくと、焼けた生薬の香ばしい香りが鼻腔を満たして食欲が掻き立てられます。熱が残っているうちに飲み込むことで食道を通り抜けている間は存在感があり、明確に何かを食べた!という気になる。とは言ってもたかだか十数ミリグラム、その数百万倍もある質量の中にあっては極小の、換言すれば無に近しい存在なのである。途轍もなく広大な何かに滅茶苦茶に蹂躙されて完全な無になりたいと思ったことはないか?

徐々に眠たくなってきていた私は夢うつつで「常にあります」と答えてしまった。すると部屋の天井が猛スピードで下降し始め私は容赦なく押し潰されてしまった。高さを失って二次元の存在となったものの、目に映る部屋の光景は相変わらず三次元的に見えたので、上位次元を認識することはそう難しいことではないのだなと思った。これらは全て思い込みだったので、妄想の過程で生まれた想像上の死だけが室内を彷徨っており、今はその産声を子守唄として嗜んでいる。一人前の立派なレディーたるもの、自ら産み落としてしまった想像上の死をそうやすやすと殺害しない。そうだろ?そんな感じです。

 

PS:炙り眠剤やだし巻き眠剤も試していく