あそけし

メイドブログ

ある明晰な記録

一つの端的な事実が指し示すところにしたがって、あらゆる可能性に思いを巡らせてみたのですが、ただひとつ明らかなことには「壊れた」以降何か重くて黒い靄のようなものが魂の上にのしかかっていて私の健全な認識活動の一切が妨害されているのです。意識外の不可解な領域から加えられた打撃によって言語野が引き延ばされ、関係を作る語は宙吊りにされるとたちまち霧散します。要するに言語の統辞の平面における認識がどうにもうまく立ちいかなくなる時があるのですが、すると次いであの恐るべき自己の不在の感覚がやってきて脳器質に諸々の記号を刻みつけていくものですから、それらの鮮烈な印象に耐えかねてなのかひどい頭痛も伴うのが常です。時に人が自傷行為をするのは自らの痛み、またそれを実感しているという素朴な事実を通じて失われた自己像を再発見するのが目的なのだと説明され、本人らの豊富な証言によって裏付けがなされています。しかしこの痛覚、この興奮して波打つ張り巡らされた神経の根を遡った先にあるのが自己そのものだといったいどこの誰が証明して見せたのでしょうか?今言えるのは私には生命が欠けているか、あるいはそれを維持する部分が切り離され光年単位で遥か彼方に投げ出されてしまったのでもう通常の手段によってそれを取り戻すことは困難を極め、身体内部のすべてにわたる緊張と虚無を抹殺するべく炸裂する閃光とその周縁に発生する引力によって確かにこちら側に引き寄せられているのを感じるのだが、虚無の軍勢が勝利を収め、内的な妨害工作が成功するやいなや有無を言わさず元の状態に戻ってしまうということだけです。これらの争闘は悪しき臓物の内側にその全過程を見出すことができるが、それは胸部のちょうど中間にあって捩れた赤黒い十字架のかたちをしており、肺腑の背後から絶えず電撃的な気配を放っている。