あそけし

メイドブログ

日記 5/31

何かの拍子にあらかじめ仕組まれた予定調和の覆いが外れて膨大な無があらわになり、あると信じて疑わない因果法則の力添えもあって、いずれそれが実現されると約束付けられていることが天の理法であると思われたところの明瞭で甘美な未来への展望が広大無辺な暗がりの中に没してゆくときのことを考える。諸々の否定的な面は差し置いて、驚嘆すべきはそこで初めて正当にも壮大な破滅の方策を講じることの権利が発見されたという事実だろう。

必然性の権威が失墜してより後、渾然一体として無秩序な纏まりだけが残されたが、その混沌たる巨大な集合に沈み込んだ前時代の聖遺物を掘り出すことに務める人がいた。聖遺物はひどく錆びついていてかつての輝きを失ってはいたが、感覚的な印象において浄福感を生じさせる何かがあった。繊細な、神秘的な面影を残していたのだ。この香気馥郁たる豊かな思想の源泉からどうして何も汲もうとせず、史料的価値以外の側面を見ようとしないのだろう?一つひとつの細部を組み合わせる仕方に着目せず、恣意的な想像力をもってするという安易なものの見方は、一つの主体、あるいは精神的共同体のうちに通底する内的な体験を記述する方法を持ち合わせていないのである。実に嘆かわしい。でもそれは別にどうでもいい。天秤の片側には希死念慮があり、もう一方を不滅願望が占めている。均衡を保っていることはまれで、常にどちらかへの傾きを示しているが、もののはずみで正反対に傾くときもある。莫大な虚無と積極的肯定との間にある緊張関係は移ろいやすくダイナミックなものなのである。

日記5/14

たっぷり睡眠を取ったのに快活に振る舞うことができねーっという明澄な悪夢の日々が存在しており、その惰性の繰り返しを離れたところから眺めているという感じになっております。しかし生活全般を俯瞰して見ているという感覚があるとはいえそれは意識を通して体験したことに他ならないので、目の前の生活の映像から暗い地獄の波が寄せては返すという流れが完全に構築されてしまったのでもう本当に何だこれはと言わざるをえない。太陽はよい。勝手に空に浮いており、まあまあすごめの明るさで地に光をもたらし、その姿をば見んとする者の眼を尽焼き尽くす。傍若無人っぷりにおいて太陽の右に出るものを知らない。だから太陽は良い。気分は比較的穏やかなんですけど気分以外は憤怒の殻にすっぽりと包み込まれているので、そのうち気分以外に芍薬の花が可憐な花を咲かせ、私は立つことを余儀なくされるのでしょう。長い間座り続けていたので急に立つと脳の髄がぐらりと揺れる。立ちくらみである。両足の感覚が戻り歩けるようになり通路左右の指示に従って進んで出口まで辿り着いた。もうこれで生活の映像を見ないですむ、ようやく悪夢から醒める時がきたのだ。扉を開けて劇場を後にする。外の世界は正午の太陽の輝きで満ちている筈だった。期待は大いに裏切られた。失意の中、私はもう喘ぎ声をあげることしか出来なかった。それらを携帯が音声認識したが、ツイッターの電波犯罪プロトコルによって無価値なカスの文章に書き換えられ、全世界に発信されている。そんな感じです。

誠惶誠恐頓首頓首死罪死罪

謹言

 

裂かれた花冠

実のところ、ゴシック式の豪奢な小舟を、隠された泉に浮かべ、そこで予期せぬ客の来訪を待ち望み続けるということは精神衛生の観点から見て、あまりよろしくないことだ。間断なく上下する鍬鋤の残像を遠くに眺めながら、この退屈極まりない労働時間をやり過ごすべく、とりとめのないことを考え続けて不安定で曖昧な、思考の暗路を辿っていた農場監督官は、ふとそのように思い至った。今しがた心の内に浮かんだ、どう恣意的に解釈しても意味付けすることの出来ない奇怪な観念の深みを検討する間もなく先住農耕民からの作業報告があり、正午を過ぎたのだと分かった。体の向きを変え対面すると、二人は絡み合って四角錐となった。区画ごとに整然と分けられた大規模農場内の、どのブロックの作物の成長状況はこうであるとか、トマト畑の一帯に病気の兆候があるとかの簡潔な報告を記録した後、彼らは互いに元の人型に戻ったが、農耕民はなおもまだその場に留まってなにか言いたげな様子だったので、何かあるなら躊躇わず言うようにと促した。「滅せるものには」口の端が両耳の辺りまで引き伸ばされ、赤い線が頬を横断する。「如何なる計量も存せず、其については語られるべき言の葉もないだろう」そう言い終えたところで彼は力尽き、瞬く間に干からびてミイラとなったが、不思議なことに目や耳の穴、口元から七色の光が漏れ出ていた。そうだ、人体の中にはパーティーライトが埋め込まれている、世俗的な安楽は苦を本性にするものである、迷い猫は断頭台の露と消える...遠い記憶の彼方へとしまいこまれていた言葉が再び色彩を取り戻す。それは本のある章句か、それとも生ある人の発話だったか。オデュッセイアハムレットか、それとも猥雑な三面記事の内に見出されたものだったか。そのどれでもなかった。頭上を掠め飛ぶカラスが嘔吐混じりに引きはがすような鳴き声をあげ、午後のギラついた太陽を幻惑させていた。おぼろな記憶が指し示したのは学校の帰り道、夕暮れの河川敷で秘密の待ち合わせをしたある遠い日の記憶だった。その日から遡ること数日前、夥しい数の手紙が下駄箱に無造作に詰め込まれていたが、その全てに胆汁と思われる体液が丹念に塗りたくられていた。手紙の内容は○日後(正確な日時は不明である)学校から少し離れたところにある小川に面した公園に来てほしいというもので、後日指定された場所に着いてせわしなく辺りを見渡していると、程なくして畦道を駆けてくるクラスの委員長の姿が見えた。月並みな言葉を交わした後二人は絡み合って四角錐となり、夜警の番をやり過ごして秘密の小道を通り抜け、積み木で作られた偽りの王宮から密かに立ち去った。次に彼らは数学という永遠の板、机の箱の様々な国々を周遊し、平穏を求めて彷徨っていたところ、ある町の人々の手厚い歓迎を受けてそこに定住することに決めたが、そこの住人たちは花束を常に抱えており、いかなる時も片手しか使わないといった次第で、日常的な動作にも二倍の手間がかかっていた。一風変わった風習ではあったが、見知らぬ訪問者である二人に対して住民はとても好意的な態度で接してくれたので、特に深掘りすることもなく、また次第に気にならなくなっていった。ある日委員長が街先で世間話に興じていたところ、話し相手の持っていた花が彼女にこう囁いた。薄い金属刃の元に命の高さは平等である、と。金属刃とは決断を迫る妾の夫にして打ち捨てられた花瓶である。このことが二人を悩ませていた。彼女が町の住人と交流を深める中、監査官は昼の間は引きこもり、夜な夜な外に繰り出しては手首に蓋をあてて自身の脈拍を吸い出すという奇行を繰り返していたが、幸いにも彼の姿は誰にも目撃されることは無かった。そして過酷な冬が過ぎた。蟄居生活も平穏無事に終わり、春の穏やかな光が雲間からすき込んでいた朝、木蓮の花びらで着飾った老婆の示すままに町の外れの大木に向かうと、枝々に結ばれた無数の影があった。それらは変わり果てた住民の首吊り死体だった。実りとは元来こういうものなんだよと言い残して老婆は去っていった。諸意識の調和に失敗し、狂気に飲まれつつあった彼もその惨状を目の前にして狼狽せずにはいられなかった。統合は完全に失調して彼の意識体は九十六角形に変化した。四肢の先から冷たくなっていくような感覚と激しい動悸が収まった後、身を起こして前方に再び目をやると、死体どころか大木すらも無かった。それまで数ヶ月の間寄留していた小規模ではあるが彩りのある豊かな街とその家々は消失し、彼は一人荒野に佇んでいたのである。かつての街の風景を思い出しながら大木のあった地点から自宅への道を辿ると、朽ち果てた一つの草庵に行き着いた。正統に歴史的な時間から墜落した時間だったものの中に彼は取り残されていたのだ。恒星を手に取って万年先のアナロジーを検索すると、蔓延する。残酷な挽臼で美しい幻想をひくことが蔓延するのだ。事実、たとえ妄想であったとしても、それらは幸福に満ち満ちた素晴らしき日々であったし、記憶の内に最も強く刻まれた思い出であった。しばらくして彼らは元の人型に戻ろうと思い立ったが致命的な失敗をしてしまい、分離の儀式が終わると一方には監査官の完全な姿、もう一方には足首と二本の手の指だけが残されていた。澄み渡る星空の下、彼は彼女の足に丁重に空気の靴下を履かせた。そしてそれを埋めた。頬を伝う涙が挽臼に零れ落ちると夜啼鶯と百足が投入口から這い出てきて、それぞれが天と地になった。その後は一連の出来事を記憶の彼方にしまい込んで誰からの問いかけにも答えることなく何事もなかったかのように振る舞った。そして現在彼女を埋めた地所の真上は農場となり、そこには種を植えてもいないのにマンドラゴラが自生しているという。

 

 

Unto thee, immortal one

Beneath the Ponderosa Pine, a witch of wonder and woe,

Her wings unfurled like a tapestry, freedom's emblem aglow.

She danced with gentle octopuses, misted in pink spray,

In depths of imagination, where madness held sway.

As a captain of the cosmos, brave and daring to roam,

Her ship was filled with sweet delights, and blue spirits at home.

But when she wasn't soaring, through the starry expanse,

She rode a giant peacock, beating drums to a mad dance.

Her imagination knew no bounds, in the wilds she'd ride,

On mechanical horses, petals sweet like candy, beside.

And in the tranquil waters, of a lake so serene,

A giant duck was her friend, a world unlike she'd ever seen.

But with all her wonders, her story had a darker side,

A loneliness that clung like a shroud, no mushroom soup could hide.

Her tale was ever-changing, her mind a raging sea,

A mirage that taunted the soul, to where madness might be.

Her friends would smile, adorn hair with golden leaves,

But her spirit remained adrift, on the brink of darkened eves.

A witch of woe, a soul in turmoil, a tale of wild delight,

Where sound and sense, collided in a dance, that might take flight.

日記 3/11

🐟「精神がアンビヴァレンスになってきた」

🦖「アンビヴァレンスの意味をご存知か」

🐟「いえ」

🦖「その意味の未だ与り知らぬ語を用いて自己の様態を表出するような命題は意味を持ちうるか」

無「否。」

🦖「しかしそのことによってお前の存在が損なわれるということはないのである」

漠然とした有「ゥ。」

春の訪れを予感させるうららかな気候の中、ぶらぶらと川のほとりを散歩していると、川の流れに逆らって漠然とした有が泳いでいた。それは1匹であるかのように見えたが、何しろ漠然としていて曖昧だったので、群れをなした複数匹であったようにも思えるが、今となっては分からない。

ほどほどにしたまえよ

生後一ヶ月を迎えたジャンガリアンハムスターのみかんちゃん。他のハムスターと比べてその発達は目覚ましく、出産直後の身長は約2cmほどだったが、一日後には4cm、また一日後には8cmと、指数関数的にすくすくと成長した。生まれてから30日目にあたる今、みかんちゃんの姿は地球上のどこからでも確認することが出来る。潤んだ瞳は富士山を軽く収め、地平線の向こうまで伸びている身体は今現在どこまで続いているのかとんと見当もつかぬ。曖昧に把握せざるをえない抽象的な観念よりも実際に目で見える物質的なものの方が一般により容易に信仰することが出来るので、存在自体が普遍universalの体現であるみかんちゃんは今やただ一にして頂点に座する信仰のシンボルとなった。これからもみかんちゃんはすくすくと成長してゆくのだ。いずれ宇宙の全てを埋め尽くし、まだ見ぬ遥かな星々もこの毛並みのよく愛らしい生物の発見に沸き立つことだろう。しかしみかんちゃんの信仰があまねく宇宙に波及すれば、銀河連盟の掲げる政教分離の原則が崩壊するという事態になりかねない。現状を重く受け止めた銀河連盟は早々に暗殺集団を派遣した。暗殺者達はみかんちゃんに対していかなる攻撃が有効であるのかと長い間思いあぐねていたが、とりあえずつねってみることにした。すると激しく上下に震えた後、みかんちゃんは微動だにしなくなった。ハムスターはストレスに弱いのである。喜びもつかの間、みかんちゃんが死の際に放った1544762599257581736186デシベルの極大断末魔が遅れてやってきて、有象無象を薙ぎ払った。人類は瞬く間に赤黒い霧と化し、崩壊の楽章に彩りを添えた。

一方ブルーアーカイブのトリニティ総合学園ではみかんちゃんにのみ神としての超越性を帰するという思想の元ユニタリアニズム的な派閥が興り、学園モチーフの三位一体論は完全に否定されるに至ったので、信仰箇条的なアレで総力戦ボスからヒエロニムスが速やかに削除される運びとなった。すると事前の告知も何も無く改変が行われたことを不満に思った先生達がお気持ちを表明したが、ブルアカ運営も強気な姿勢を崩さず、以降公式YouTubeチャンネルから投稿される「先生、ちょっとお時間いただきます!」はアリスが先生に罵詈雑言の数々を浴びせるという内容に変更された。

色彩に接触した正義実現委員会の面々は純然たるテロリストとなり、同じく色彩に接触して反転した放課後スイーツ部の部員もそれに連帯して動乱に加わった。各々が若干悲観的であったアリウスの生徒達はオプティミストになり、混迷の極を迎えていたキヴォトスでただ彼女達だけが屈託のない笑顔を浮かべて一心に踊りを踊っていた。ヘルメット団は社会奉仕の精神に目覚め、無責任にもアビドスの荒野に杉を植林しまくったのでキヴォトス中が花粉地獄に見舞われる日も近い。

 

眠れぬ夜に

なかなか眠りにつくことが出来なかったので、焼き眠剤を服用することにした。眠剤といっても今手元にあるのは医師から直接処方されるような、脳髄にキッチキチに作用して服用後の精神に異様な活力、もしくは安らぎを与え、普段私たちを人間たらしめているような何らかの枠組みに対して普段私たちが与えているある一定の価値を忘却の彼方へと葬り去り、その外側にある何か深淵な領域に導いてしまうことで外面的には完全な無を迎えてしまうようなアレではなく、漢方をいい感じにごちゃ混ぜして作られたマイルドめなやつです。淡い黄色の見た目にところどころ焦げ目がついて黒ずんでいる箇所があり、たまごボーロを彷彿とさせる。口元へ持っていくと、焼けた生薬の香ばしい香りが鼻腔を満たして食欲が掻き立てられます。熱が残っているうちに飲み込むことで食道を通り抜けている間は存在感があり、明確に何かを食べた!という気になる。とは言ってもたかだか十数ミリグラム、その数百万倍もある質量の中にあっては極小の、換言すれば無に近しい存在なのである。途轍もなく広大な何かに滅茶苦茶に蹂躙されて完全な無になりたいと思ったことはないか?

徐々に眠たくなってきていた私は夢うつつで「常にあります」と答えてしまった。すると部屋の天井が猛スピードで下降し始め私は容赦なく押し潰されてしまった。高さを失って二次元の存在となったものの、目に映る部屋の光景は相変わらず三次元的に見えたので、上位次元を認識することはそう難しいことではないのだなと思った。これらは全て思い込みだったので、妄想の過程で生まれた想像上の死だけが室内を彷徨っており、今はその産声を子守唄として嗜んでいる。一人前の立派なレディーたるもの、自ら産み落としてしまった想像上の死をそうやすやすと殺害しない。そうだろ?そんな感じです。

 

PS:炙り眠剤やだし巻き眠剤も試していく